旅行会社のツアーに参加すると、だいたい添乗員さんがいるじゃないですか。
よくツアー客の先頭に立って、旗を振っているのが添乗員さんです。
彼らは、ツアーコンダクター(通称・ツアコン)と呼ばれる存在で、ツアーガイドとは、また別の存在なんですね。
< ツアーガイドと添乗員の違い >
- ツアーガイド:観光地を案内してくれる人(基本、現地集合)
- 添乗員:旅行のスケジュールを管理したり、現地でのトラブルに対応する人(最初から最後までツアーについてくる)
※ツアーガイドがいない場合は、添乗員がガイドを兼ねることもあります。
ツアーの添乗員になれば無料で旅行できるから、楽しそう…♪
って思うじゃないですか。
私もそう思ってたんですが、この本を読んで、180度考えが変わりました。
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派遣添乗員ヘトヘト日記 ―当年66歳、本日も“日雇い派遣”で旅に出ます |
この本の著者は50歳をすぎてから、添乗員の世界に飛び込み、以来15年以上にわたり、派遣添乗員として働いているそうです。
旅行業界の裏側が垣間見れる面白い本だったんですが、添乗員の労働環境がブラックすぎることに、ちょっと引きました。
具体的にはこんな感じ…
< 派遣添乗員の実情 >
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- 給料が安い(平均月収10万円)
- 自分のせいじゃないのに、客からひたすら怒られる
- 体調が悪くても休めない
- 一つのミスで、業界から干される
- いくらでも変わりがいるので、立場が弱い
というわけで今回は、添乗員になる方法や実際の給料、仕事の大変さ、添乗員に向いている人とそうでない人の違い…などを本の中からご紹介します。
目次
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え、添乗員さんの給料、安すぎ…!?
ツアーの添乗員さんって、普通、旅行会社の社員さん…だと思うじゃないですか。
違うんです。
ツアーの添乗員の大半は、添乗員の派遣会社から旅行会社に派遣されている非正規雇用の人たちなのです。
彼らの報酬は、だいたい日当1万円(+各種手当)。
ツアーの前後に、旅行会社での準備や精算などの作業が発生するため、実際に添乗業務ができるのは、月に20日くらいが限度になるそうです。
以下、本の中から抜粋。
仕事はゴールデンウイークやお盆休みが書き入れ時となる。春のお花見、秋の紅葉シーズンも非常に忙しい。
逆に冬場は仕事量が急激に減る。月に1~2回しか仕事が回ってこない、というようなこともざらである。
いくら働きたいと思っても、仕事がないのが実情で、旅行シーズンのオフはほとんど収入ゼロに近い状態となる。
派遣添乗員とはかくも不安定な仕事なのである。
(『派遣添乗員ヘトヘト日記』より)
著者の年間の収入を月平均にならすと、およそ月収10万円ほどなのだとか。安い…。
著者のように、年金や副業など添乗員以外の収入もある人でないと、普通に生活するのは厳しいみたいです。
また、派遣添乗員は非正規雇用の派遣スタッフなので、正社員のような安定はありません。
仕事が減れば、収入も減ってしまうのです。
特に今は、コロナ禍によって、添乗員の仕事が激減しています。
収入がほぼ0円になってしまった添乗員さんも、けっこういるみたいです…。
「平謝り」という大切なお仕事
添乗員の主な仕事は何か?
それはずばり、クレーム対応です。
桜を見に行くツアーなのに、桜が全く咲いていなかったり…
紅葉ツアーなのに、渋滞に巻き込まれて、着いた頃には辺りが暗くて紅葉が見えなかったり…
旅行会社のミスのせいで、ホテルの手配がされていなかったり…
たとえ自分のせいではないトラブルでも、現場の最前線にいる添乗員が、一人でクレームを受けなければなりません。
しかも、ツアーの参加者の中には、人のアラさがしを無上の喜びとするクレーマーもいます。
たとえどんなにひどいクレームを言われ続けても、添乗員は謝るしかありません。
下手に反論すれば、怒りの油に火を注ぐことになるのですから…。
クレームを受けないためのコツ
クレームを受けないようにするには、先回りして、トラブルを未然に防ぐことが肝心です。
渋滞にハマりそうなら、早めにツアー参加者に説明して謝ったり、旅行会社の担当者に連絡を入れて旅程を変更したり…
と、トラブルによる被害が最小限にとどまるよう心がけるのです。
とはいえ、トラブルは100%回避できるものではありません。
クレームになってしまったとき、筆者は以下の対応を心がけているそうです。
数々のクレーム対応で身につけた3つの法則がある。
1つ目は、トラブルに際しては、落ち着いた態度を取ること。
2つ目は、自分のせいではなくても、参加者の不満を受け止め、頭を下げ、謝ること。
3つ目は、起こった出来事に対して迅速に対処すること。
大切なのは、ツアー参加者たちに「仕方がない」「添乗員の責任ではない」「この添乗員なら許そう」…と思ってもらうことなのです。
体調が悪くても、急には休めない
添乗員の仕事には、旅行前の下調べや準備が欠かせません。
そのため、よほどのことがない限り、急に休むことはできないのです。
ツアー当日、急に自分の代わりにツアーへ行ってくれる人を見つけるなんて、大変難しいことです。
だから多少、体調が悪くとも、無理して仕事に行くしかないのです。
(ただ、ベッドから起き上がれないほどひどい状態なら、派遣会社の社員さんが代わってくれたりするようです)
一つのミスで、業界から干されるリスク
小さなミスや人間関係が原因で、別の派遣会社へと移る添乗員はよくいるそうです。
ただ、派遣会社には横のつながりがあるため、致命的な失敗により、会社をクビになった人は、次の行き場を失ってしまいます。
ある添乗員は、忘れ物に気づいて、発車間際の新幹線から降りた。しかしその間に、ドアが閉まってしまう。添乗員はドアにしがみつき、列車の出発を遅らせて、大問題となってしまった。
別の添乗員は修学旅行中、泣いていた生徒(女子高生)をはげまそうと、肩に手をやり声をかけた。しかし生徒は、添乗員にセクハラをされたと学校に訴え、これまた大問題に発展してしまった。
いずれの添乗員も、それらの失敗によってレッドカードをもらい、業界から去っていかざるを得なくなった。
どんなに仕事が好きでも、一度の致命的なミスで、二度と添乗員の仕事ができなくなってしまうのは、悲しいことですね…。
添乗員になるのは、意外と簡単
添乗員になるには「旅程管理主任者」という国家資格が必要です。
ただ、この資格の試験内容は、団体ツアーに関するごくごく常識的な問題ばかりなので、そう難しくはないそうです。
(国内に関しては、受験者のほぼ全員が合格というレベルのテストなんだとか)
最近は、中高年になってから添乗員になる人も増えているため、60代~70代の添乗員も珍しくないそうです。
なお、添乗員の仕事はツアー当日、予定どおりにスケジュールを進めていくこと。
ツアーの内容そのものは旅行会社の人が考えるので、ツアーの企画をしたいなら、添乗員の派遣会社ではなく、旅行会社に就職したほうがいいでしょう。
立場の弱い派遣添乗員
著者のような派遣添乗員は、旅行会社に日雇いで雇われている存在なため、圧倒的に立場が弱いのです。
実際、仕事でミスをしたり、お客さんからの評判が悪かったりすると、二度とその旅行会社から仕事をもらえなくなってしまいます。
旅行会社にとっては、派遣添乗員の代わりなんていくらでもいるからです。
特に、派遣添乗員の命運を握っているのは、ツアーの最後、参加者に配られるアンケートの結果です。
アンケートでは、ツアーの内容や食事、宿泊施設、添乗員、ドライバーなどを、「満足」「ほぼ満足」「普通」「やや不満」「不満」の5段階で、評価する形になっています。
添乗員としては当然、ほかの項目はともかく、自分の評価が気になる。
通信簿がいつも「不満」「やや不満」に片寄るようならば、仕事を干されてしまうからだ。
トラブルを避け、スケジュール通りにツアーを進めるだけでは、アンケートで高評価を得られません。
高評価を得るには、ツアー参加者に“満足”を提供しなければならないのです。
添乗員は最低限、旅程を管理する能力が求められる。
それにプラスして、話術が巧みなど、参加者を楽しませる能力が必要だ。
なかには歌やマジックを披露してツアーを盛り上げる添乗員もいる。
参加者は楽しいひとときをすごすため、時間を作り、お金を払って、ツアーに来ています。
だから、楽しい雰囲気づくりをすることも、添乗員の大切な仕事なのです。
添乗員に向いている人とは?
では、添乗員に向いているのはどんな人なのでしょうか。
添乗員として仕事を続けている人は、私の周囲を見渡しても、打たれ強い人ばかりである気がする。
何しろ春と秋の繁忙期には、毎日のようにツアーがあり、寝ている時間もないほどなのだ。
ひとつのクレームにいつまでもクヨクヨしている暇もない。
またある程度の経験を積めば、クレームにも慣れてくる。
この打たれ強さに加え、体力さえあれば、添乗員の基礎はできたと言っても過言ではない。
サービス精神が旺盛でウケのいい人でも、語学堪能で海外ならまかせてくれという人でも、体力がない人にはこの仕事はつとまらない。
…実際、旅が好きという理由で、添乗員になっても、すぐに辞めてしまう人が多いのだとか。
添乗員という名の厳しい世界を生き残っていけるのは、精神的にも肉体的にも強い人たちなのです。
最後に
今回は、添乗員の厳しい現実を紹介しましたが、添乗員の仕事は辛いことばかりではありません。
本の中には、思わずクスッと笑ってしまう話や、心温まるエピソードもたくさん書かれています。
その他にも…
-
- ブラックな旅行会社とホワイトな旅行会社の違い
- 添乗員の仕事の実際の流れ
- 添乗員の仕事の楽しいところ
- 格安ツアーの裏事情
- 福引の1等・無料バスツアーの当選者が100%女性なワケ
- バスの車内で、う○こを漏らしたお客さんの話
…などなど、面白い内容が盛りだくさんでした。
添乗員の仕事や旅行業界に興味がある方は、ぜひ読んでみてください♪
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